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走行時のローター温度 その1

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走行時のローター温度 その1

ローターの形状、材質については既に雑学講座38~40でお話ししましたが、今回は、走行中 の通風孔有りローター(ベンチレーテッドローター,Vローターと略)と通風孔無しローター (ソリッドローター、Sローターと略)の温度についてのお話です。
ローター温度は、パッド性能、パッド・ローター寿命、ベーパーロックなどに大きな影響を 及ぼしますので、ブレーキ屋が頭を悩ますテーマの一つです。

   先ずは、両者の温度特性の違いを確認しておきましょう。
簡単に説明するため、VローターとSローターとも同じ厚さ、径、材質とします。 前者は、後者に比較し、冷却能は低速ではほぼ同じですが、中・高速では大きくなるメリットがあります。 通風孔により冷却面積が増えるためです。
一方、制動時の上昇温度が高く、厚さが不均一(ジャダーの原因)になりやすいというデメリット があります。通風孔により重量が軽くなり(熱容量減少)、厚さ方向の熱膨張が不均一になるためです。

では、もう少し冷却について詳しく見ていきましょう。
機械式ブレーキの原理は、クルマの運動エネルギー(=車重*速度*速度/2)を熱に換えることでした。 例えば、車重1tのクルマを時速100kmから停止した時のエネルギーは、1リットルの水を約90℃も温める ことができます。発生した熱は、ローター、パッドを暖めますが、時間とともに対流、伝導、輻射 により外部に伝達され、ローター、パッドは次第に冷えていきます。空気が、ローター、パッド表面 より熱を奪い取るのが対流です。扇風機で冷やすのと同じ原理です。空気が高速、多量で、ローター と空気の温度差が大きいほど、冷却能は大きくなります。ローター、パッドと直接、間接に接触している 部品を通して熱が伝わるのが伝導です。コーヒーカップのスプーンが熱くなる現象と同じです。 ローター、パッドの表面より赤外線として出て行くのが放射です。太陽に当たると暖かくなる現象 と同じです。ローター、パッドの冷却は大部分が対流と伝導で行われ、放射による冷却は無視できます。


ベンチレーテッドディスク

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(参考1)ローター温度低減対策としては、ローター径・厚さ、通風孔形状変更以外にも 空気ダクトによるローターの対流冷却、アルミホイールによる高熱伝導冷却なども効果的です。

(参考2)ベーパーロック(雑学講座1,2参照)はローター、パッド、ピストンを介して 伝わった伝導熱によりブレーキ液が沸騰し、ブレーキを踏んでもノーブレーキとなる現象 です。この熱伝導は対流と違ってゆっくりと時間がかかる現象です。ローター温度が高い 状態のサーキット走行や、長くて急な坂道降坂後の低速走行時などに起き易い現象です。 これを防止するには伝導経路に断熱材を入れるのが効果的です。例えば、2層パッド、ステン レスシム、ゴムコートシム、プラスティックピストンなどが実用化されています。

                                続く

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