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雑学講座95 パッド摩擦性能試験と摩擦係数 その1

ユーザーの皆さんから、スポーツパッドの摩擦係数を教えて欲しいとか、もう少し摩擦係数の高いものが 欲しいなどの御要望があります。
パッドの摩擦係数は車重、速度、ローター形状・寸法、パッド(ローター)温度、ブレーキ圧力、 パッドの使用履歴などによって大幅に変化しますので、一言でこれだとお答えできないのが悩みの種です。 正確にお答えするには、少なくとも数百通りの組み合わせ試験を行う必要がありますが、 残念ながら手間がかかりすぎて実施できないのが実情です。
そこで今回は実際の試験方法及びその試験で得られる摩擦係数の意味についてお話ししましょう。 パッド選定の参考にしてください。

一般的にはパッドの開発は物性試験、台上性能試験、実車試験の順番で行いますが、今回は 主に台上性能試験についてお話します。
実車試験と比べて、1日24時間試験ができ、しかも詳細なデータが取リ易いなどのメリットがあります。

先ずは、「JIS定速式摩擦試験」です。この試験に使われるパッド、ローターはフルサイズ(実寸)では ありませんのでブレーキシステムを設計する時の摩擦係数としては使用できません。主にパッドの品質管理に 使われています。試験は、25mm*25mmのテストピースをローターに一定圧力で押し当てて摩擦係数を測定します。 ローター温度は100、150、・・、350℃としています。米国の一部の州ではこれと似たような試験方法で 得られた摩擦係数をパッドに表示することが義務付けられています。例えば、表示FFは摩擦係数が条件A(常温) で0.35〜0.45、条件B(高温)で0.35〜0.45、表示FGは条件Aで0.35〜0.45、条件Bで0.45〜0.55を表します。 なお、日本ではこのような表示の義務付けはありませんが、一部のパッドでは裏板に表示しています。

次は、「JASOパッド摩擦性能試験」です。この試験は、実車のブレーキ、パッド、ローターを使用し、 試験条件も一般ユーザーの使い方をシミュレートしていますので、ブレーキシステムを設計する時の基本的 な摩擦係数としています。パッド開発を行うには避けて通れない試験です。 軽、小型乗用車、普通乗用車、小型トラックなどそれぞれに見合ったイナーシャ(重量)の鉄製円盤を ローターと一緒に回転、制動しています。 これを「ダイナモ試験機」(下図参照)といいます。試験項目は効力性能(その1,2,3)、フェード性能(その1,2) 、水濡れ性能、摩耗などから成っています。ではそれぞれの試験項目を見ていきましょう。

効力性能試験は、パッド温度を数10℃(市街地走行時の温度)の状態で、初速度(50,80,100、120km/h・・) *減速度(圧力)(0.1、0.2、0.3g・・)の組み合わせで数10回制動します。 このサイクルを初期、第1フェード試験後、第2フェード試験後と合計3回繰り返します。
各々の停止時間、停止距離より1制動中の平均摩擦係数を求めます。平均摩擦係数は初速度、減速度(圧力)、 履歴によって違ってきます。通常は総平均を平均摩擦係数といっているようです。 乗用車(純正)で0.35~0.45、欧州車、スポーツパッドで0.40~0.50が一般的です。
この平均摩擦係数はあくまでも総平均ですので個々の条件では値が違うことがあります。 また、サーキット走行などの厳しい条件では試験していませんので、このような走行では、あまり参考になりません。

フェード性能試験は、0→100km/h→0と急制動を10数回繰り返して短時間に温度を上げ、平均摩擦係数の変化を 調べます(図1参照)。通常、最高温度は500℃前後になります。実車では、平均摩擦係数が大幅に落ち込むと (フェードといいます(雑学講座2参照))ペダルを更に踏み込みますが、それでも十分な効きが確保できない ためノーブレーキのように感じることがあります。車重が重いほど、制動間隔が短いほど温度上昇率が高くなり フェードしやすくなります。坂道、サーキットなどでは耐フェード性能の優れたパッドが必要不可欠ですね。
フェード対策としてスポーツパッドでは耐熱温度の高い有機物や融点の高い基材用繊維などを使用しています。 基材用繊維としては、他社スポーツパッドでは一般的に金属繊維(鉄)を使用しています。弊社SEIスポーツパッド SSタイプでは金属繊維の代わりに、耐熱性無機・有機繊維を使用して温度依存性(後述)をなくし、 ホイールの錆付着防止も図っています。
一般的にフェード性能は、平均摩擦係数の最低値で判断できます。また、1制動中のブレーキフィーリングは、 瞬間摩擦係数(後述)を判断要素とすることも必要でしょう。なお、本試験は非常に厳しいサーキット条件までは シミュレートしていませんので、そのような使い方をする時は実車(あるいは台上)での確認が必要となります。


図1 フェード性能試験

JISとJASOの分担については、日本自動車工業界(JAMA)の 「自動車に関する国内標準制定のプロセス」 を参照下さい。


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