ブレーキ雑学講座
ABS入門 その2 制御の狙い目
制御の狙い目
今回は、タイトルからして、少しかたい表現になりますが、我慢して読んで下さい。
まずは、下のスリップ率の式をご覧下さい。
車体速度-車輪速度 スリップ率 = ───────── × 100% 車体速度 |
一体、何のことかわかりませんネ。では、もっと具体的にお話しましょう。
スリップ率0%は、車輪速度=車体速度ですので、すなわち、車輪(タイヤ)がロックすることなく、路面を転がっている状態です。順調そのもの (^_^)
一方、スリップ率100%は、車輪速度がゼロになっている状態です。つまり、車輪(タイヤ)が完全にロックしていることです。これは、滑り易い路面で急ブレーキ を踏むと起りやすくなります。目が回るワ (@_@)
ついでに、スリップ率が-(マイナス)になることもあります。これは、 式から分るように、車輪速度>車体速度の場合です。具体的には、 発進時にアクセルを目一杯踏込み、タイヤが空回りする時ですね。あせるヨ (-_-;)
このスリップ率が、その1でお話した制動力と操舵性、方向安定性に大きな影響を及していることをお話しましょう。

図に示す進行方向摩擦力は、まさしく制動力のことです。また、コーナリングフォースは、車両の横方向の力(一言でいうと、横に踏ん張る力のこと)ですので、大きい程、操舵性や方向安定性が良い考えてください。
スリップ率100%の場合を考えますと、制動力はピーク時よりも若干小さくなりますが、コーナリングフォースは何とゼロです。これはブレーキはそれなりに効くが、操舵性や方向安定性は全くないということです。これは、本当にコワイ状態です。
つまり、ABSは、このタイヤと路面のスリップ率を図の点A~点Bの範囲内で最適な制動力と操舵性・方向安定性を同時に確保するためのブレーキシステムです。すなわち、ブレーキ液圧を自動的に毎秒数10回、上げ下げし、スリップ率が点A~点Bの範囲内になるように一生懸命苦労?している訳です。 ABS様々です。
もっとも、雨の日や雪の日は、ABSに頼ることなく、最初から速度を落して走るのが優良ドライバーの常識ですね。これなら制動距離が延びる心配もないし、スリップも少なくなります。