車の安全の要であるブレーキは、過酷な条件下で休みなく働き続けています。
ある調査では日常の運転中のトラブルにおける「ブレーキ不良」は上位4位との結果もあり、
安心・安全なカーライフを実現するためには日常の点検が欠かせません。
ここでは、ブレーキの点検方法、ブレーキ部品である「ブレーキパッド」と「ブレーキローター」の交換方法について解説します。
※専門の業者に頼らずに、ご自身で作業を行う場合は、ご自身が責任を負うことになります。ご注意下さい。
ブレーキの点検方法
ブレーキ部品は使用によって劣化・消耗する消耗部品です。安全・安心・快適なカーライフの実現のために、定期的な点検が必要です。
1. 交換が必要な主な部品
- ブレーキパッド
- ブレーキローター(ディスクローター、ブレーキディスク)
- ブレーキシュー
- ブレーキ液(ブレーキフルード、ブレーキオイル)
2. 日常点検
車の日常点検項目は、ブレーキ以外の項目も含めて下記15項目が推奨されています。
ひと月、または、3000km毎の点検を推奨します。①、⑩、⑪がブレーキの日常点検項目です。
エンジン・ルームを点検
- ① ブレーキ液の量
- ② ウインド・ウオッシャの量
- ③ バッテリ液の量
- ④ 冷却水の量
- ⑤ エンジンオイルの量
車の周りを点検
- ⑥ タイヤの空気圧
- ⑦ タイヤの亀裂・損傷・異常摩耗
- ⑧ タイヤの溝深さ
- ⑨ ランプ類の汚れ・損傷、点灯・
点滅作動状況
運転席に座って点検
- ⑩ ブレーキペダルの踏み代と
低速からのブレーキの効き(鳴き) - ⑪ パーキング・レバーの引き代
- ⑫ ウインド・ウオッシャの出具合
- ⑬ ワイパのふき取り状況
- ⑭ エンジンの掛かり具合と異音
- ⑮ 低速でのエンジン運転状況と車の
加速状態
ブレーキパッドの交換
1. ブレーキパッドの交換の必要性
ブレーキローターは車両が走行する運動エネルギーを、タイヤと共に回転するローターに両側からパッドを押し付けることで発生する摩擦で制動力を発生させる装置です。この摩擦によりパッドは摩耗してすり減っていくため、交換が必要な消耗部品です。
パッドの交換を怠るとブレーキと不良になり、最悪ケースではノーブレーキ等の危険な状態に陥ります。こまめな点検と早めの交換を行ってください。
交換しないと発生する問題点
- ブレーキ鳴きの増加
- べーパーロック(ノーブレーキ)※フル摩耗時
- 制動距離の延長
- ブレーキローターの損傷(交換費用増)
2. ブレーキパッドの交換時期
車を使用する環境や乗り方で寿命が大きく異なるため、距離や期間で寿命を判断することは困難です。
定期点検、日常点検で常に状況を確認し、交換時期の判断が必要です。
なお、国産車のパッドの場合はウエアインジケーターを備えていることが多く、使用限界になるとブレーキをかけるたびにチーチーやヂーヂーという音がするようになる。この音がしたら即交換が必要。そのまま使い続けると、ブレーキが使用不能になり、非常に危険です。
一般的なブレーキパッドの寿命
- 小型乗用車4~5万km
- スポーツ車3~4万km
- SUV車2~3万km
摩擦材部分の厚みの状態
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3. ブレーキパッドの点検方法
ブレーキパッドの点検方法をご紹介します。
ブレーキフルードのチェック
ブレーキパッドの厚みチェック
ホイールの汚れをチェック
ブレーキ警報ランプが点灯していないかチェック
4. ブレーキパッドの交換方法
ブレーキキャリパー3形状別の交換作業方法をご紹介します。
手順①→②→③に沿ってご覧ください。
ブレーキは、重要保安部品です。作業後の点検を確実に行ってください。
ご自身で交換された場合、点検整備の記録と保存が義務づけられています。(整備手帳に、日付、氏名、作業内容を記載ください。)
ブレーキローターの交換
1. ブレーキローターの交換の必要性
ブレーキパッドの交換の項目でも挙げたように、ローターは走行時にタイやと同じく回転しており、ブレーキを掛けるとパッドが挟み込み減速・停止します。この摩擦によりローターも摩耗してすり減っていきます。
また、鋳鉄製のため、雪寒地や沿岸部など車両の使用環境によって錆や腐食が進行することがあります。錆や、摺動部の厚み差はブレーキ振動などのトラブルの原因となり危険です。定期点検で部品の状況をよく確認し、異常が見られた時や、際や走行時に異常を感じた際は交換が必要です。
※ブレーキローターは、ディスクローター、ブレーキディスクとも呼ばれます。
交換しないと発生する問題点
- ジャダー(ブレーキ振動)
- パッドを新品に交換してもブレーキの効きが安定しない
- ブレーキ鳴き、異音の発生
- ブレーキパッド、ローターそれぞれの早期摩耗
2. ブレーキローターの点検項目
ブレーキ時に「鳴き」や振動が発生する、パッドの摩耗が早くなった等の現象が発生したら、ブレーキローターの状況を確認してみましょう。以下の症状が見られた場合、交換を推奨します。
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錆びをチェック(インナーも忘れずに)
摺動面のブレーキ溝(凹凸溝)をチェック
摺動面の摩耗状況をチェック(厚み、均一さ)をチェック
摩耗限界値をチェック(軽自動車は特に注意)新品時の厚みと摩耗限界値との差の半分以上摩耗した場合は要交換
(例.新品時16㎜、摩耗限界値が14.5㎜の場合 厚みの差は1.5㎜。0.75mm以上摩耗で交換を推奨します)
ロータ(トヨタ車用) |
他社市販 |
|||
---|---|---|---|---|
方法 |
刻印タイプ |
鋳出し文字 |
鋳出し文字 |
刻印タイプ |
位置 |
ハット部側面に刻印 |
摺動部内周 |
フィン外周側 |
摺動部外周面 |
上記①~④をフロント・リア どちらもチェック
3. ブレーキローターの交換時期(厚み)
点検時に以下の症状が見られた場合は交換を推奨します。
- 錆が発生している場合
- 摺動面にレコード盤のような凹凸溝が発生している場合
- 新品時の厚みと摩耗限界値との差の半分以上摩耗した場合
(例.新品時16㎜、摩耗限界値が14.5㎜の場合 厚みの差は1.5㎜。0.75mm以上摩耗で交換を推奨します) - ブレーキ振動が発生した場合は、要点検
摺動面の厚みの状態例) 新品時の厚みが28.0mm/摩耗限度:26.0mmの場合
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※規定の厚みは、ローターに鋳造文字で表示があります。
ブレーキローターの厚みは肉眼では判断できませんので、専用器具で測定が必要です。
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4. ブレーキローターの交換方法
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タイヤを外す
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キャリパーどかす
丸見え
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ローター外す
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交換する
ペーパーがけ
目の粗さが80~120番のサンドペーパーで、円周方向に軽くかけます。
点検、不具合対処、交換を行う際は、注意事項を守って作業をしてください。
なお、専門の業者に頼らずに、ご自身で実際の作業を行われる場合は、ご自身が責任を負うことになります。
ご注意ください。
注意事項を守らないと、ブレーキの制動不能を生じ、お客様の死亡や大けがなどの人身事故が生じます。
注意事項を守らないと、ブレーキの制動不能や低下を生じ、お客様の死亡や大けがなどの人身事故の原因につながります。
注意事項を守らないと、お客様がケガをされたり、物品に損害を与える原因となります。
ブレーキ不具合の対処方法
ブレーキの最も重要な性能は車を止めることですが、車の静粛性が高まるにつれて制動時に生じるブレーキの騒音がないことが要求されます。ハイブリッド車や電気自動車など、電動化車両においては特に静粛性が高いため、この要求値も高まっています。
ブレーキをかけたときに「ピー」や「キー」と出る音をブレーキの「鳴き」と言います。
設計開発時には、この鳴きの抑止を狙っていますが、鳴きが起こったときの対処方法を紹介します。
※鳴きの原因は車両個々に起因するため100%鳴きを止める方法はありません。ご紹介内容は鳴きを発生しづらくする初歩的な対処方法です。