ブレーキ雑学講座
自動車用ブレーキの規格
今回は自動車のブレーキの規格についてお話ししましょう。
自動車に求められる性能は、使われる国の道路事情、国民性などによって千差万別です。
例えば、日本で使われるバスはドイツのものをそのまま使うわけには行きません。ドイツは
右側通行・右扉ですので日本で使うときは左扉にする必要があります。つまり、各国の事情
を考慮した規格(要求性能及び試験方法)であることが必要です。昔のように国内向けのみ
を生産していたときはなんら問題ないわけですが、近年のように全世界へ輸出あるいは
全世界より輸入するようになると、車を製造するうえでも、型式認定試験(その国の規格に
合致するかどうかの試験)を受ける上でもメーカーを初め、政府機関も大変な労力を要する
ことになってきました。見方によっては実質的な非関税障壁と見なされてきました。
そこで、これを改善するため、国連のWP29「自動車基準に関する世界フォーラム」において、
技術基準の共通化とか相互承認(例えばドイツで承認された自動車の照明灯は日本で
再度日本基準に合うかどうか試験する必要は無くなり、そのまま自動的に承認される)に
関して、全世界の関係者が議論しています。完全な共通化には長い時間がかかりますが、
(100%は当然ながら無理と思いますが)、共通化されたものから逐次実施されています。
日本では、道路運送車両法で、いろいろな規格が設けられています。
(1)制動距離 | 日本では通常は100km/h(Max160km/h)より一定の踏力(約49kg)で制動しその時の最大停止距離が規定されています。 |
(2)繰返し制動 | いわゆるフェード性能(SEMINARその1参照)です。日本では要求性能、試験方法が規定されていませんが、欧州・米国では山降りが多いためか細かく決められています。 |
(3)失陥時の性能 | 1つのブレーキ系統が破損した場合でも、残りのブレーキ系統でブレーキが効くように規定されています(SEMINARその26参照)。 |
(4)パーキングブレーキ性能 | 機械式(通常の足ブレーキは油圧式)で構成されており、20%勾配の坂道で停止でき、しかも主ブレーキ(通常の足ブレーキ)失陥時にも規定距離で止ること。 |
(5)警報装置(ブレーキ液面、ABS故障など) | 故障時のドライバーへの警告のためです。 |
米国・欧州の規格は、日本の規格とは要求性能、試験条件が違うのは勿論ですが、特異な規格としては
制動時の安定性(米国)、ブレーキの前後バランス・タイヤ/路面利用効率(欧州)などがあります。
日本の車は、これら各国のさまざまな規格をクリアーして世界に輸出されているわけですから、立派なものですね。
尚、実際のブレーキ性能については、「自動車事故対策センター」
から、毎年、発売された代表的な車種について、テスト/公表をしているのは、ご存じですね。
自動車アセスメント(自動車安全情報)