ブレーキ雑学講座
パッドの寿命 その1
「パッドの寿命は、どれくらい持つの」と読者の方からよく質問を受けます。クルマの種類、
使い方、地域、パッド材質などによって千差万別ですので、一般的な回答がしにくいのが
実情です。1万km走行程度で即交換必要なケースもあれば、5万kmでもまだまだ大丈夫なケース
等さまざまです。
しかしながらそうも言っておられませんので、大雑把ですが、走行条件による
寿命のちがいについてお話ししましょう。
パッドの寿命は、使用温度によって大きく左右されます。下図に示しますように、温度が高い
ほど寿命は比例級数的に短くなります。またパッド材質によってもその傾向は違ってき
ます。例えば、スポーツパッドはノーマルパッドに比べて高温での摩耗を少なくして寿命を
長くしています。
パッドの寿命を長くするには、出来る限りパッド温度を低くすれば良いことがわかります
(また、パッドは高温では摩擦係数が小さくなりますので、この点からもパッド温度を低く
抑えることが重要になってきます)。
そのため、ローターでは外径・厚さアップ、冷却用通風孔の設置など、車両ではローター、
パッドを冷却するための空気ダクトに工夫を凝らしています。一方ブレーキではパッド寿命
を長くするためにパッド面積・摩擦材の厚さアップなども行っています。
では、走行条件によってパッド寿命はどのようになるのでしょうか。
先ずは、街乗り走行が主な場合です。パッドの走行中の平均温度は100℃~150℃くらい
でしょうか。その場合、ノーマルパッドの大雑把な寿命は小型乗用車で4~5万km、スポー
ティ車で3~4万km、RV車で2~3万km位でしょう(以降、この寿命を基準とし比較すること
とします)。スポーツパッドではほぼ同じかあるいは若干短くなります。
次は山道走行を主に行う場合です。当然ブレーキは頻繁に使いますので、温度はかなり
上がります。従って図からわかるようにノーマルパッドでは約1/2、スポーツパッドでは
高温での摩耗がノーマルパッドより少ないため約2/3となります。
サーキット走行では、高速から頻繁にブレーキを使いますので、温度は常に350℃以上になって
いるでしょう。ノーマルパッドは摩擦性能の点から使用不可です。スポーツパッドは摩擦
性能は大丈夫ですが、摩耗寿命は1/10以下になるでしょう。
(つづく)