ブレーキ雑学講座
ブレーキアシスト装置
日本の運転免許保有者は、2001年現在で約7500万人(男性4400万人、女性3100万人)、
保有率は約70%(男性85%、女性58%)だそうです。若者からお年寄りまで誰でも
運転できる時代ですね。しかしながら、お年寄りは判断速度、反応速度などが若者に比
べてどうしても衰えているため、お年寄りにやさしい安全機能がますます必要になっ
てきています。
国交省の自動車アセスメント
「安全装置の装備一覧」によると、ブレーキ関係の安全装置としてABSとブレーキ
アシスト装着がリストアップされています。
最近は両者ともほとんどのクルマに標準装備されているようです。
では、ブレーキアシスト装置とはどんなものなのでしょうか。これは読んで字の如く、
「急ブレーキなど強いブレーキ力が必要な際に、ブレーキの踏込み力をさらに
補助して、ブレーキ力を増す装置」です。
この装置により、緊急時にブレーキを強く踏めない人でも、強く踏める人並みのブレーキ
力を得ることができるようになります。
さらに、急ブレーキ時のABS機能(停止距離短縮,操縦安定性、車両
安定性)を十分に発揮することもできるので、事故防止に役立ちます。
従来からあるブレーキ倍力装置(雑学講座43「倍力装置」、63,64「ブレーキの分類
」参照)とは何が違うのでしょうか。一言で言えば、ブレーキアシスト装置は知能を
持ったブレーキ倍力装置といえます。
具体的な例を図1に示します。これはABSのECU(コンピュター)がペダルストローク
センサーの動きをモニターし、緊急ブレーキかどうかを判断し、緊急ブレーキと判断
した場合は真空倍力装置に指示を与えてブレーキ力の増大を図る装置です。
図1.ブレーキ倍力装置とABS(ECU)
先ずは、ブレーキアシストの無い場合を考えましょう。通常ブレーキでは、ブレーキペダル
はゆっくりと踏まれますので、ブレーキ力もゆっくり上がっていきます(線A)。
急ブレーキでは、ブレーキペダルは速くしかも強く踏まれますので、ブレーキ力は素早く
立ち上がりしかも大きくなります(線B)。ところがお年寄りが急ブレーキを踏んだ
場合は、ブレーキペダルはそれなりに速いものの踏みこむ力が弱いためブレーキ力
が十分得られなくなり事故などにつながるおそれがあります(線C)。
ブレーキアシストがある場合はどうでしょうか。ブレーキペダル速度がある閾(しきい)
値(L)を超えると、ABSのECUは緊急ブレーキと判断します。
そして、真空倍力装置のソレノイドバルブを自動的に動かし、大気を取り入れ、ブレーキ
力を増大させます(線D)。その結果事故を防止することができます。
なおブレーキアシスト装置としては、ペダルストロークセンサーの代わりにブレーキ
液圧センサー、真空倍力装置の代わりに油圧倍力装置、あるいはABSの油圧発生装置
などを使ったものもあります。
以上
ブレーキアシストの役目