ブレーキ雑学講座
パッドの摩耗調整と摩耗警報
今回はパッドの摩耗調整と摩耗警報についてのお話です。
パッドは使っている間に徐々に摩耗していきます。この間パッドとローターの隙間
を一定に保つのが摩耗調整です。一方、パッドの摩耗限界(交換時期)を運転者
に知らせるのが摩耗警報です。
先ずは摩耗調整です。ディスクブレーキが登場する以前は、ドラムブレーキが主役
でした。その当時は、ライニング(摩擦材)が摩耗すると、運転手はドラムの調整穴
からドライバーを突っ込んで隙間を調整していました。大変な作業でした。
ところが、自動摩耗調整機能のあるディスクブレーキが普及するに従って、これが
「デファクトスタンダード」となり、今では法律に「・・隙間は自動的に調整できること」
と規定されるまでになりました。
自動車用ディスクブレーキでは、パッドとローターの隙間は通常0.1mm以下になるように
調整されています。隙間が小さ過ぎるとローターと常に接触するため、作動不良、
パッド・ローターの早期摩耗の原因となります。また大き過ぎるとペダルストロークが
伸びノーブレーキにつながります。
自動摩耗調整としては、ピストンシールのゴム弾性を利用するものと、バネ力を利用
するもの(機械式)があります。前者は非常に簡単な構造(図参照)でコンパクトなため
多くのディスクブレーキに用いられています。しかしながらピストンシールが劣化すると
ゴム弾性がなくなり調整機能が失われてきますので、定期点検、定期交換が必要
不可欠となってきます。
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一方、後者の機械式の特徴は、作動安定性と隙間を大きく設定できることです。
クルマでは、ローターの振れは0.1mm以下ですので、隙間も小さくてすみますが、
鉄道、産業機械ではローターが数mmも振れますので、その分隙間を大きくするため
機械式が使われています。なお、ドラムブレーキではラチェット機構の機械式が
使われています。
次は、摩耗警報です。パッドの摩耗限界を直接的に検知するものとしては、PWI
(Pad Wear Indicator)があります。通常は、1ブレーキに1個のPWIが取り付けられています。
パッドが摩耗限界厚になると、レバー状の金具がローター表面に当たり、チーチーと
音を出す「可聴式」、パッド内部に組み入れられた電線が摺り切れて運転席の警報灯
が点灯する「電気式」があります(詳細は、MAINTENANCEコーナー参照)。
前者は安価ですが、音が聞こえない、鳴きと間違える、ローターを傷つける等の問題があります。
後者は高級車に多く使われています。
警報の精度は落ちますが、マスターシリンダーのブレーキ液面低下、ブレーキ鳴き、
ホイールの摩耗粉による汚れでも摩耗限界は間接的に検知できます。例えば、ブレーキ
液面が「LOW」レベルまで低下したら、摩耗限界が近いことがわかります。また、パッドが
摩耗限界厚近くになるとキーキーと鳴き易くなります。
パッドは摩耗するに従って、性能、鳴きなどが徐々に劣化していきます。摩耗限界を
超えて使用すると、効き不良、摩擦材と裏板の剥離などが生じ、危険状態になってきます。
さらに、摩擦材が完全に摩耗してしまうと、パッド裏板(鉄)とローター(鉄)が接触するため、
極端な効き不良、効きのアンバランス、ローターの損傷、ブレーキ液漏れなどが生じ、
非常に危険な状態となってしまいます。
パッド摩耗警報が出たら、できる限り早くパッドを交換するようにしましょう。 安全第一
です。