ブレーキ雑学講座
ペダルストローク その2
今回は、マスタシリンダ液圧に比例した部分RSです。式で表すと
RS=k*α*P
α=PS剛性=ブレーキ剛性+パッド剛性+ホース剛性+倍力装置剛性+etc
k=ペダル比/マスタシリンダ面積
となります。
図2の角度(α)をPS(ペダルストローク)剛性といい、マスタシリンダ液圧に対して
ブレーキ部品がどの程度膨らむかで評価します。膨らみが少ないほど、すなわち、αが小さいほど剛性が
高いといいます。
PS剛性に影響を及ぼすブレーキ部品は、大きい順番にキャリパ(約40%)、パッド(約30%)、
ブレーキホース(約10%)となっています。倍力装置、マスタシリンダ、ABSなどもわずかながら
影響を及ぼします。
キャリパは、シリンダ面積が相対的に大きく、1台に2個ないし、4個装着されていますので、PS剛性に
占める割合は大きくなっています。キャリパ剛性は、液圧を加えた時のキャリパ本体のたわみ量で
評価します。キャリパ剛性は、シリンダ径が小さいほど、浮動型より対向型が、1ピストンより
2ピストン(片側)のほうが高くなります。ペダルフィーリングを重視するスポーツ車では、
対向型2ピストンが使われているのが良い例でしょう。
キャリパーは、対向型の方が作動部分が小さく剛性が高い | |
<< 浮動型 >> | << 対向型 >> |
意外でしょうが、パッドもPS剛性に大いに影響しています。パッド剛性は、パッドを押した時の圧縮量で
評価します。パッド剛性は、非金属系より金属系パッドが、厚さは薄いほど、使用温度は低いほうが
高くなります。つまり、金属系は固くて圧縮されにくく、摩耗パッドは厚さが薄いため、圧縮量が少なく、低
温では高温よりは固いためです。一般的に、パッド剛性が高いパッドは、ブレーキフィーリングがよい
といえますが、摩擦係数が極端に低いパッドはそうでもありません。逆に、パッド剛性は低くても
摩擦係数が高く(しかも安定している)ブレーキフィーリングがよいといわれているパッドもあります。
ブレーキホースは、内部に圧力がかかると膨張します。ホース剛性は、長さが短いほど、使用材料が固い
ほど高くなります。外周を金属製の網で覆い、膨張を抑えたメッシュホースに交換しますと、ホース剛性は
高くなりますが、ホースのPS剛性に占める割合が小さいため、PS剛性への影響はわずかです。
ただし、キャリパ移植などより、簡単にチューンアップできるのが強みでしょうか。
また、PS剛性を高くするには、ペダル比を小さくしたり、マスタシリンダ径をサイズアップ
すればよいことは、上の式から容易におわかりいただけると思います。
最後に参考として、キャリパを移植するときのプロセスを以下に示します。
①前後輪キャリパをサイズアップし移植します。これにより、効きは良くなりますが、PSは伸びます。
フェード時の伸びなどを考慮しPSに余裕があればそのまま使用してもかまいません。
②もし、PS剛性に余裕が無いなら、マスタシリンダをサイズアップします。PS剛性は短くなりますが、
マスタシリンダ面積に比例して、効きは落ちます。
③ 効きをアップ(従来並に)したいなら、倍力装置をサイズアップします。
このように、ブレーキシステムでは、一つのブレーキ部品を換えると他の部品も変更しなくては
ならないことが良くあります。交換するにあたっては、くれぐれも専門家に相談されることをお勧めします。