ブレーキ雑学講座
ABSとブレーキフィーリング その1
読者の皆さんから「スポーツ走行したいのでタイヤ、パッドなどを交換したが、ABSが
早く作動しすぎる。」、「ABSが作動すると、最後まで踏ん張れない」などのご質問、
ご意見が多く寄せられます。
ABSは、作動を開始すると、その瞬間ブレーキ圧が減圧しペダルが深くなります。
そのタイミング、減速度変化をブレーキフィーリングの違いとして、上記のように表現されているようです。
ABSについては、既に入門編(雑学講座17~21)でお話していますが、今回はもう少し
突込んで、ABS制御とブレーキフィーリングおよびスポーツパッドに交換した時の
ブレーキフィーリングの変化についてお話します。
ABSの目的は、減圧~加圧を1秒間に何回も繰り返し、前後左右のタイヤのスリップ
率を一定範囲内に制御して、停止距離の短縮、操縦性、車両安定性を確保すること
です。また、ABSは車輪の速度、車両減速度などを監視するセンサー、ブレーキ圧を
増減するHU(ブレーキ圧制御ユニット)、ECU(電子制御ユニット)、制御ソフトなど
からできています。
今では、ABSはほとんどのクルマに装着されています。そのセンサー、HU、ECUの基本
性能はクルマによって大きな差はありませんが、制御ソフトは自動車メーカー、車種など
によってかなり違っています。
乾燥路から雪道まで、低速から高速まで、緩ブレーキから
急ブレーキまで、ありとあらゆる条件で停止距離の短縮、操縦性、車両安定性を満足
できる制御ソフトがあればよいわけですが、これらは一方を立てれば他方が立たずと、
いわゆるトレードオフの関係にあるため、どうしても重点の置き所が違ってくるためです。
車輪速センサー(SS) | 電子制御ユニット(ECU) | 液圧ユニット(HU) |
Speed Sensor | Electronic Control Unit | Hydraulic Unit |
例えば、スポーツ車向けの「スポーツABS」はABS制御開始スリップ率を高めに設定し、
ABS制御を遅らせています。その結果、踏ん張りが利くようなフィーリングとなっています。
車高の高いクルマは、操舵時の転倒を防止するため、操縦性、車両安定性に重点をおき
停止距離(効き)は若干犠牲にした制御ソフトにしています。
砂利道、極悪路では、条件によってはABSが作動しないようにしているRVもあります。
砂利道、極悪路などでは「ABSなし」の方が停止距離が短くなることが多いためです。
また、ABS作動時のペダルのキックバック(反動)も自動車メーカー、車種によって差が
あります。昔は反動で足が折れそうなクルマ、ABSが作動しているのかどうかわから
ないクルマと設計者の好みが色濃く出ていましたが、現在はそんなに極端な差は見受けられません。
つづく。